AWSとは

AWS(Amazon Web Services)は Amazon が提供するクラウドコンピューティングプラットフォームです。 2006年のサービス開始以降、世界最大のクラウドプロバイダーとして市場シェアトップを維持し続けています。

従来のオンプレミス環境と比較したとき、AWS の最大の強みは「使った分だけ支払う従量課金」「数分でリソースを調達できる俊敏性」「グローバルなインフラを即座に利用できる規模」の3点です。 一方でコスト最適化や責任共有モデルの理解が不可欠であり、単純に「移行すれば安くなる」とは言えません。

💡 AWS の責任共有モデル

AWS はインフラの物理的なセキュリティや仮想化レイヤーを管理します。OS・ミドルウェア・アプリケーション・データの保護はユーザー側の責任です。どこまでが AWS の責任でどこからが自己責任か、を設計前に必ず確認してください。

グローバルインフラ — リージョンとAZ

AWS のインフラは リージョンアベイラビリティーゾーン(AZ)エッジロケーション の3層で構成されます。

リージョン
地理的に分離されたデータセンターの集合体。東京(ap-northeast-1)・大阪(ap-northeast-3)など。データの居住地を決める最上位の単位。
アベイラビリティーゾーン(AZ)
リージョン内に複数存在する独立した物理ロケーション。電源・ネットワークが分離されており、1つのAZが障害を起こしても他AZで継続稼働できる。
エッジロケーション
CloudFront(CDN)や Route 53(DNS)のキャッシュノード。世界400拠点以上に分散し、エンドユーザーへの応答遅延を最小化する。
ローカルゾーン
特定の都市部にリージョンのサブセットを置き、超低レイテンシーを要求するワークロードに対応する拡張機能。

マルチAZ設計の基本

本番環境では原則として複数AZにリソースを分散させます。ALBは自動的にマルチAZに対応しており、RDS/AuroraもマルチAZオプションでスタンバイを別AZに配置できます。

サービス全体マップ

AWS のサービスは 200 を超えますが、以下の6カテゴリで整理するとシステム設計の全体像が見えてきます。

カテゴリ 代表サービス 役割
コンピューティング EC2 / Lambda / ECS / EKS / Fargate アプリケーションの実行環境を提供する
ストレージ S3 / EBS / EFS / Glacier データの永続化・保存を担う
データベース RDS / Aurora / DynamoDB / Redshift / ElastiCache 構造化データ・非構造化データの管理
ネットワーク VPC / ALB / NLB / CloudFront / Route 53 / API Gateway 通信経路・トラフィック制御・DNS を提供する
セキュリティ IAM / WAF / KMS / Shield / Cognito / Secrets Manager 認証・認可・暗号化・DDoS防御
監視・開発・運用 CloudWatch / CloudTrail / CodePipeline / CloudFormation / CDK 可観測性・CI/CD・インフラのコード化

カテゴリ別概要

① コンピューティング

アプリケーションをどの形態で実行するか、が最初の設計判断です。 EC2 は仮想サーバーで最も柔軟性が高く、Lambda はイベント駆動のサーバーレス実行基盤、 ECS/EKS はコンテナオーケストレーションを担います。 PART 02 で詳しく解説します。

② ストレージ

S3 は容量無制限のオブジェクトストレージで静的コンテンツや帳票・ログの保存に最適です。 EBS は EC2 にアタッチするブロックデバイス、EFS は複数 EC2 から同時マウントできるファイルシステムです。 PART 03 で詳しく解説します。

③ データベース

AWS は目的別に特化したマネージドDBを多数提供しています。 RDB には RDS / Aurora、NoSQL には DynamoDB、 データウェアハウスには Redshift、キャッシュには ElastiCache が代表例です。 PART 04 で詳しく解説します。

④ ネットワーク

VPC は AWS 上の仮想ネットワーク空間です。その中にサブネットを作り、EC2 や RDS を配置します。 外部からのトラフィックは ALB / NLB で受け、静的コンテンツは CloudFront でキャッシュします。 PART 05 で詳しく解説します。

⑤ セキュリティ

IAM はすべての AWS 操作の認証・認可の根幹です。 WAF で HTTP レベルの攻撃を遮断し、KMS でデータを暗号化します。 PART 06 で詳しく解説します。

⑥ 監視・開発・運用

CloudWatch でメトリクス・ログ・アラームを一元管理し、 CloudTrail で AWS API コールの操作ログを記録します。 CodePipeline / CodeBuild で CI/CD を構築し、CloudFormation / CDK でインフラをコードで管理します。 PART 07 で詳しく解説します。

このシリーズの読み方

本シリーズは以下の2フェーズで構成されています。

フェーズ1(PART 02〜07):カテゴリ別にサービスの「引き出し」を作る。 各サービスの役割・特徴・使い分けの判断軸を整理します。

フェーズ2(PART 08〜09):ユースケース別に「組み合わせる」。 Webアプリ・サーバーレスAPI・データ分析基盤・コンテナ基盤・CI/CDパイプラインの5パターンで、 実際にどのサービスをどう繋ぐかを解説します。

読み進める前に確認しておくと理解が深まるもの

① AWS 無料利用枠でアカウントを作成し、マネジメントコンソールを触ってみる。② VPC / EC2 / S3 の概念だけでも事前につかんでおくと、PART 02〜05 がスムーズに入ってきます。