オンプレの証明書運用の実態
オンプレ環境でのSSL証明書管理は、多くの現場で以下のような「年次イベント」になっている。
- 認証局(DigiCert・GlobalSign等)から証明書を購入(有料)
- CSR(証明書署名要求)を手動で生成
- 発行された証明書をLB・Apache等に手動で配置
- 有効期限をカレンダーに登録して翌年の作業を予約
- 有効期限切れ直前に冷や汗をかきながら更新作業
証明書の配布先が複数台(LB × 2台、Apache × 4台など)になると、配置漏れや設定ミスによるサービス断のリスクも高まる。
ACMで何が変わるか
AWS Certificate Manager(ACM)は、証明書の発行・更新・ALB/CloudFrontへの適用をすべて自動で行うマネージドサービスだ。
ACM:無料(AWS Certificate Manager パブリック証明書)
ACM:自動更新(60日前に自動リクエスト・適用)
ACM:ALB / CloudFrontに自動適用(手動配置不要)
ACM:無料で発行可能(*.example.com形式)
⚠️ ACMの制約
ACM証明書はAWS内のマネージドサービス(ALB・CloudFront・API Gateway等)でのみ使用できる。EC2インスタンスにSSHで入って直接インストールする用途には使えない(その場合は別途証明書を取得・配置する必要がある)。
SSL終端パターンの選択
AWSではSSL終端をどこで行うかを設計として選択できる。
| パターン | 構成 | 採用ケース |
|---|---|---|
| CloudFrontのみ | CloudFront終端 → ALB(HTTP) | 静的サイト・ALBが不要なシンプル構成 |
| ALBのみ | ALB終端 → コンテナ(HTTP) | CloudFrontが不要な社内向けAPI |
| 両方終端(推奨) | CloudFront終端 → ALB終端(再暗号化) | 大規模・セキュリティ要件が厳しいケース |
| End-to-End | CloudFront → ALB → コンテナまで暗号化 | PCI DSS等の完全暗号化要件 |
CloudFront + ALB の2段終端設計
大規模システムで最も推奨されるパターンが「2段終端」だ。CloudFrontとALBがそれぞれ独立したACM証明書を持つ。
クライアント
│ HTTPS (TLS 1.2/1.3)
▼
CloudFront
・ACM証明書 ① (us-east-1 で発行 ※必須)
・TLSポリシー:TLSv1.2_2021 等
・DDoS対策(AWS Shield Standard)
・WAF統合(IP制限・レートルール)
│
│ HTTPS(再暗号化)← VPC外からの通信を守る
▼
ALB
・ACM証明書 ② (ALBと同じリージョンで発行)
・TLSポリシー:ELBSecurityPolicy-TLS13-1-2-2021-06 等
・ターゲットグループへのルーティング
│
│ HTTP(VPC内部・Security Groupで保護)
▼
ECS / EKS コンテナ
💡 「再暗号化」が必要な理由
CloudFrontからALBへの通信がHTTPだと、VPC内部とはいえ同じリージョンの別サービスを経由する可能性がある。再暗号化(HTTPS)にすることで、CloudFront → ALB 間の盗聴リスクをゼロにできる。セキュリティ要件が厳しい業界(金融・官公庁)では再暗号化が事実上の標準。
セキュリティポリシーの選び方
ALBのセキュリティポリシーでは、許可するTLSバージョンと暗号スイートを選択できる。
| ポリシー名 | TLSバージョン | 推奨用途 |
|---|---|---|
| ELBSecurityPolicy-TLS13-1-2-2021-06 | TLS 1.2 / 1.3 | 新規システム・標準推奨 |
| ELBSecurityPolicy-2016-08 | TLS 1.0〜1.3 | 古いクライアント対応が必要な場合 |
| ELBSecurityPolicy-FS-1-2-2019-08 | TLS 1.2(Forward Secrecy必須) | 高セキュリティ要件 |
対比表
| 項目 | オンプレ | AWS |
|---|---|---|
| 証明書取得 | 認証局から購入(有料) | ACM(無料) |
| 証明書更新 | 手動(年1回) | 自動(60日前に自動更新) |
| 証明書配布 | LB・Apacheに手動配置 | ALB / CloudFrontに自動適用 |
| SSL終端箇所 | LB または Apache | CloudFront → ALB(2段) |
| 暗号化ポリシー | httpd.conf / ssl.conf で管理 | ALBセキュリティポリシーで選択 |
| ワイルドカード証明書 | 高額(数万円〜) | 無料発行可能 |
| 有効期限管理 | 手動(カレンダー管理) | 不要(自動) |
ハマりポイント
⚠️ CloudFront用証明書は us-east-1 で発行する必要がある
CloudFrontに設定するACM証明書は、必ず us-east-1(バージニア北部)リージョンで発行しなければならない。東京リージョン(ap-northeast-1)で発行した証明書はCloudFrontに設定できない。ALB用は各リージョンで発行でよい。
⚠️ DNS検証 vs メール検証
ACMの証明書発行時、ドメイン所有権の確認方法にDNS検証とメール検証がある。DNS検証(Route 53にCNAMEレコードを追加)を選ぶと自動更新が確実に機能する。メール検証は更新時に再度承認操作が必要になるため、DNS検証を推奨。
✅ 次の記事では…
PART 02 では Apache の機能を AWS サービスで分解する方法を解説する。mod_rewrite・mod_deflate・IP制限・静的コンテンツ配信がどのAWSサービスに対応するかを整理する。