レビューのたびに「このプロパティは必須にすべきでは」「この値は0以上のはず」という指摘を繰り返しているうちに、それは人間がその都度目視で確認することではなく、スキーマとして一度書いてしまえば機械が永遠にチェックし続けてくれる類のルールだと気づきました。この記事は、その気づきをJSON Schemaという形にまとめたものです。

配列 vs キー付きオブジェクト — どちらを選ぶか

複数の要素を持つデータを表現する際、配列(array)にするかキーで引けるオブジェクト(object)にするかは、設計の初期段階でよく迷うポイントです。

観点配列が向く場合キー付きオブジェクトが向く場合
順序表示順・処理順に意味がある順序に意味がなく、IDで一意に引きたい
アクセス方法先頭から順番に処理する特定の1件をキーで即座に取得したい
件数の増減件数が可変で、全件を走査することが多い件数は概ね固定(例: 曜日・環境名など)
"items": [{"id":1,...}, {"id":2,...}]"environments": {"dev": {...}, "prod": {...}}

💡 迷ったら配列を選ぶ

キーの一覧をあらかじめ列挙できない・件数が可変なデータは配列にしておくのが無難です。オブジェクトのキーとして動的な値(ユーザーIDなど)を使うと、JSON SchemaでのバリデーションやTypeScriptの型付けが複雑になりがちです。

正規化と冗長性のトレードオフ

リレーショナルDBの正規化の考え方と同様に、JSONでも「同じ情報を複数箇所に重複させるか、参照(ID)で1箇所にまとめるか」という判断が発生します。

正規化(参照形式)
ユーザー情報などをIDだけで参照し、実体は別配列に1つだけ持つ。更新箇所が1箇所で済むがJOIN相当の処理が必要。
非正規化(埋め込み形式)
関連データをそのまま埋め込む。読み取り側の処理は単純だが、同じ情報が複数箇所に重複し更新漏れのリスクがある。

API レスポンスのように「読み取り専用で、クライアント側の処理を単純にしたい」用途では非正規化(埋め込み)が好まれる傾向があり、設定ファイルやマスタデータのように「更新の一貫性」が重要な用途では正規化(参照)が好まれます。用途に応じて意図的に選択することが重要です。

JSON Schema とは

JSONデータとJSON Schemaをバリデータに入力し、検証結果を得るまでの流れを示す図

図1: データとスキーマをバリデータに渡すことで、構造・型が仕様どおりかを機械的に判定できる

JSON Schemaは、JSONデータの構造・型・必須項目・値の範囲などをJSON自体で記述する仕様です。「このデータはこういう形であるべき」という契約をコードとして定義し、レビューではなくツールに検証させられるのが最大の利点です。

スキーマの実装例

PART 03で扱ったメンバー情報のJSONに対して、実際にJSON Schemaを定義してみます。

JSON — member.schema.json
{
  "$schema": "https://json-schema.org/draft/2020-12/schema",
  "title": "Project",
  "type": "object",
  "required": ["project", "members"],
  "properties": {
    "project": { "type": "string", "minLength": 1 },
    "members": {
      "type": "array",
      "minItems": 1,
      "items": {
        "type": "object",
        "required": ["name", "role"],
        "properties": {
          "name": { "type": "string" },
          "role": { "type": "string", "enum": ["Engineer", "Reviewer", "PM"] },
          "age":  { "type": "integer", "minimum": 0, "maximum": 120 }
        },
        "additionalProperties": false
      }
    }
  },
  "additionalProperties": false
}
キーワード役割
required必須プロパティを配列で指定する
type値の型(object/array/string/number/integer/boolean/null)を指定する
enum取りうる値を列挙し、それ以外を許可しない
minimum / maximum数値の範囲を制限する
additionalPropertiesfalseにすると定義外のプロパティの混入を防げる

ajv による検証自動化

ajvはNode.js製の高速なJSON Schemaバリデータです。CLI版のajv-cliを使えば、コマンド一発でデータとスキーマの整合性をチェックできます。

Shell — ajv-cliの導入と検証コマンド
# ajv-cli のインストール
npm install -g ajv-cli ajv-formats

# データをスキーマに対して検証
ajv validate -s member.schema.json -d project.json

# 検証成功時の出力
# project.json valid

# 検証失敗時の出力例
# project.json invalid
# data/members/0 must have required property 'role'

エディタと検証コマンドで同じスキーマを使い回す

PART 02で紹介した$schemaによる入力補完と、ここで紹介したajv validateによるコマンドライン検証は、同じmember.schema.jsonを参照できます。「エディタ入力中の補完」と「保存後の機械的検証」を1つのファイルで両立できるのがJSON Schemaの強みです。

まとめ

構造設計の判断基準とJSON Schemaによる検証を組み合わせることで、「なんとなく良さそうな形」で終わらせず、レビューで指摘していた項目の多くを機械的なチェックに置き換えられます。

次の章では…

PART 05(最終回)では、ここまでの内容を使った実践例と、ajv-cliCIパイプラインに組み込む具体的な手順を解説し、全5回を総括します。

→ PART 05 — 実践例とCI組み込みへ