このフェーズの座組み

要件定義フェーズの座組みと成果物

図1: 要件定義フェーズの役割・成果物・タスク

要件定義フェーズ — 座組み

フル稼働PMPMOアーキテクトセキュリティ
部分参加アプリ(FE)アプリ(BE)インフラDBA
レビュー参加QA

⚠️ 非機能要件の合意はこのフェーズで完結させる

性能(RPS・レスポンスタイム)・可用性(SLA・RTO/RPO)・スケーラビリティ・セキュリティ要件は、アーキテクト・インフラ・DBA・セキュリティ全員の合意が必要だ。このフェーズで合意できなかった非機能要件は後のフェーズで根本的なアーキテクチャの見直しを引き起こす。

成果物マトリクス

役割成果物ポイント
管理PM業務要件定義書、ユースケース一覧、業務フロー図ビジネス側との合意が核心。要件の優先度(MoSCoW等)も明記する。
管理PMO課題管理台帳、要件変更管理プロセス定義変更管理の仕組みはここで作らないと後で機能しない。要件変更の承認フローを明文化する。
技術統括アーキテクト非機能要件定義書(性能・可用性・拡張性・RTO/RPO・データ保持期間)後工程の設計制約になる最重要文書。全員の合意署名を取る。
アプリFE画面要件一覧、ラフワイヤーフレームユーザー動線の整理。デザイナーがいれば協働する。UXの観点も含める。
アプリBE機能要件一覧、外部インターフェース要件連携先システムの洗い出しを早めに。インターフェース仕様の合意が遅れると設計が止まる。
インフラインフラ非機能要件へのインフラ観点コメント、SLA要件確認記録可用性要件(マルチAZ・DR等)は構成コストに直結する。コストとのトレードオフを明示する。
データDBAデータ要件定義(主要エンティティ洗い出し)、データ量・更新頻度の見積もり業務データの棚卸し。データ量の見積もりはDB選定とインフラ設計に影響する。
横断QAテスト方針書(初版)、受入基準の大枠テスト種別・範囲・受入基準はここで合意しておく。後から追加すると工数が跳ね上がる。
横断セキュリティ脅威モデリング結果、セキュリティ要件定義(認証方式・暗号化・監査ログ要件)認証方式の決定(OAuth2/SAML等)はアーキテクチャに深く関わる。早期合意が必須。

非機能要件定義書の重要性

非機能要件定義書は、後工程の設計制約の根拠文書だ。以下の項目を必ず含めること。

項目記載すべき内容使われるフェーズ
性能要件最大同時接続数、ピークRPS、許容レスポンスタイム(95%ile)基本設計・性能テスト
可用性要件SLA(99.9%等)、RTO(目標復旧時間)、RPO(目標復旧時点)基本設計(DR構成)
スケーラビリティ将来のユーザー数・データ量の上限想定基本設計(スケール設計)
セキュリティ認証方式・暗号化要件・監査ログ保持期間基本設計・セキュリティ診断
保守性デプロイ頻度・ダウンタイム許容値インフラ設計・CI/CD設計

変更管理プロセスの設置

💡 変更管理プロセスはPMOが要件定義フェーズで設置する

要件変更の承認フロー(誰が申請し・誰がレビューし・誰が承認するか)を要件定義フェーズで確立しなければならない。開発フェーズに入ってから「ちょっとした変更」が積み重なるスコープクリープは、変更管理プロセスの不在から生まれる。

変更管理の要素定義すべき内容
変更要求の提出方法Issueトラッカー・専用フォーム・会議体での口頭申請など、チャネルを一本化する
影響評価の基準工数・スケジュール・スコープ・コストへの影響度をどう評価するか
承認権限どのクラスの変更をPMが承認し、どのクラスをステアリングコミッティに上げるか
緊急変更のルール本番障害対応などの緊急時でも事後記録は必須とする、など例外ルールも明文化する

要件定義フェーズでよくある失敗パターン

要件定義は後工程すべての土台になる。ここでの抜け漏れは後フェーズで複利的にコストが膨らむ。

失敗パターン何が起きるか防止策
非機能要件を後回しにする「マルチAZ必須」が基本設計完了後に判明し、アーキテクチャを再設計する羽目になる要件定義フェーズ開始時にインフラを参加させ、性能・可用性・DR要件を同時に定義する
ユーザーストーリーが主語不在で書かれる「〜できること」という書き方で誰向けの機能か不明確になり、実装後に「想定ユーザーが違う」と判明する「〇〇ユーザーが〜できる」形式を徹底し、ユーザー種別を先に列挙してから要件を書く
承認を口頭だけで済ませるフェーズ後半で「そんな要件は合意していない」という認識ズレが発生し、スコープ交渉が再燃する各要件定義書に承認欄を設け、書面(またはIssueのClose記録)で合意証跡を残す
変更管理プロセスを定義しない開発中盤で要件変更が口頭で発生し、設計書と実装が乖離したまま進む要件定義フェーズ中に変更管理プロセス(申請方法・影響評価・承認権限)を文書化する